日本を代表するアーティストたちの作品が、自分と社会と向き合う時間を与えてくれる。「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」
日本という枠を越えて国際的に活躍する現代美術のアーティスト6名の、活動の軌跡を辿ることができる「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」。初期から最新の作品が同じ場所に展示されている空間は、彼らの独特な世界観がどのように形成されてきたのかを教えてくれます。社会的もしくは文化的な変化の影響を受ける美術の本質をじっくりと考えることで、今私たちがいる社会とは一体何であるのかという問いが喚起されるはず。今回は、そんなSTARS展の見所を紹介します。
会場には、草間彌生、李禹煥(リ・ウファン)、宮島達男、村上隆、奈良美智、杉本博司の世界的に有名な6名のアーティストの作品がそれぞれのブースに分かれて展示されています。会場に入って最初に目を引かれるのは、仁王像のように威風堂々と待ち構える2つの像。邪気を払う役割を果たしているのだとか。オタク文化と江戸の大衆文化を融合させた「スーパーフラット」という理論で2000年代を席巻した、村上隆氏の作品です。左奥の壁面に展示されている、市川海老蔵が團十郎を襲名する披露公演のために描かれた絵画もお見逃しなく。
こちらのブースには、韓国出身のアーティスト「リ・ウファン(李禹煥)」氏の世界観が広がっています。20歳で来日した彼は、学生運動が盛んに行われていた時代を体験。大量生産が批判を受けていた中、写真手前の「関係項」という作品を制作したそう。ガラスという人工物に1トンを超える岩(=自然物)をぶつけ、新たなエネルギーの誕生を表現。当時の人々の思想のぶつかり合いとそれによる変革が、作品にそのまま反映されています。
6名のアーティストのなかで、最もキャリアが長い「草間彌生」氏。1960年代に描かれた初期の作品は、STARS展の中で最も古いものです。なかでも注目は、壁面中央にある縦長の作品「天上よりの啓示(B)」。1993年の第45回ベネチア・ビエンナーレに日本館代表として出品され、世界中から高い評価を得たものです。また、鏡貼りのミラールームにも立ち寄ってみて。小窓を覗くと、多彩な色の球体が柄を生み出す万華鏡の世界が広がっていて、草間氏の頭の中をのぞいている気分になるはず。
「奈良美智」氏のブースには、蔵出しの作品や彼が読んでいた本、集めていたもの、聞いていたCDなどが展示されています。多くの作品のテーマは”月”。写真の「Voyage of the Moon(Resting Moon) / Voyage of the Moon」も、そのうちのひとつ。小屋の窓から中を覗くと、奈良氏がインスピレーションを受けていたものがたくさん置かれているお部屋が。彼が作品づくりをしている空間におじゃましているかのような気分になります。
最後にご紹介するのは、「杉本博司」氏が1982年より制作し続けている「Revolution」シリーズの作品。地球上の様々な海で撮影された夜の水平線と白く映し出されている月の軌道が、地球と月の関係が時間と共に変化していることを表現しています。STARS展には、北大西洋とカリブ海で撮影された3枚の作品が集結。あえて90度回転させて展示することで、水平線が地球の輪郭の一部に転換させているそう。”海に浮かぶ月を眺めている自分”と”地表上に取り残された小さな点”という彼の感覚を体感することができます。
ちなみに作品だけでなく、6人それぞれのキャリアのスタートから現在をまとめた年表や、自筆原稿、新聞の批評なども展示。1958年から2019年に開催された展覧会の中から50展を選出し、当時のカタログと共に日本の現代美術がどのように海外で紹介されたのかを教えてくれるコーナーも。このように様々な面から美術に触れ、今の自分はどのような社会の変化のなかにいるのか俯瞰的に考えるきっかけにしてみては?
開催期間 | 2020年7月31日〜2021年1月3日 10:00~22:00(最終入館 21:30) ※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30) ※9月22日、11月3日は22:00まで(最終入館 21:30) |
会場 | 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階) 東京都港区六本木6-10-1 |
アクセス | 大門駅から都営大江戸線で3駅、六本木駅より徒歩6分 |
URL | https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/stars/ |
今回の旅の拠点
ホテルタビノス浜松町
ゆりかもめ竹芝駅 徒歩2分/JR浜松町駅 徒歩8分/都営大江戸線大門駅 徒歩8分